Research Abstract |
システムのパラメータ変動などの不確かさをLFR(線形分数表現)で表すLFRモデリング問題と多次元(nD)システムの状態空間実現問題は代数的に等価であり,ロバスト制御理論と多次元システム理論における基本的な研究課題である.しかし,従来の1次元(1D)システムの場合と違って,nD実現問題は,実現の次元が伝達関数の次数のみならず,その構造そしてその係数の値まで関連しているため,場合によって係数の符号が1つでも変わると得られる実現の構造や次元まですべて変わってしまうほど非線形性の強い難問である.過去20年間,ロバスト制御とnDシステムの両分野から研究されてきたが,テクニックの議論が多く,1Dの場合との本質的な違いや実現に必要な条件など核心の部分はまだ解明されていない点が多い. 本研究は,初めてnD状態空間モデルの構造的な性質と実現との関連および1Dの場合との違いを解明した上,すべでの独立変数やパラメータを同時に取り扱うことで,直接的に低次元のLFRとnD状態空間実現を構築できる新しい代数的な直接実現法とそのアルゴリズムを考案した.その結果,従来の1D可制御・可観測正準形実現法および多くの2D実現法を特殊ケースとして含んでいる上,既存のnD実現法と比べ,簡単に数式処理で実現でき,計算コストは低く,有理関数と多項式の行列を統一的に取扱えると同時に,より低次元の実現ができる特徴を持つ.また,本研究の数式処理による実現法で得た実現は,次元が低いだけではなく,符号係数がそのまま含まれるので,数値誤差のない高精度のものである.従って,より効率よく高精度なロバスト制御系を解析・設計するための強力な道具として航空宇宙など多くの応用分野に貢献することが期待できる.
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