Research Abstract |
エンジン・パワートレインの制御においては,過去の経験を取り入れることのできる,「表引き」や「If-thenルール」などを基礎とした制御方式が,主流として用いられていたが,近年,開発期間と作業量の削減のため,モデルベース手法が取りいれられるようになってきた.このような背景の元で,(社)計測自動制御学会では,「エンジン・パワートレイン先端制御理論調査研究会」が発足し,(1)エンジン始動制御門問題,(2)トルクデマンド制御問題の2つのベンチマーク問題を,モデルに基づいて解決する研究が行われている. 本研究では,連続可変動弁機構付きのV型6気筒SI(Spark Ignition)エンジンを対象として,上記2つの問題に対して設計仕様を完全に満足する手法を,それぞれ提案した. 始動制御における目的は,エンジンを短期時間でスムーズに始動することであるが,従来はスロットル角と点火時期を主体としてエンジン速度を制御しており,始動性,燃費の観点から良い制御結果が得られていない.提案法では,吸気バルブリフト量のみを主体としてエンジン制御おこない,離散時間極値探査制御を応用することで,制御仕様すべてを満足する方法を提案した. 一方,トルクデマンド制御における目的は,要求トルクを短時間で正確に実現することであるが,従来は,「表引き」を利用した制御をしており,エンジン個別のバラツキや経時変化を考慮することができない.提案法では,吸気バルブリフト量の制御にスミスのむだ時間補償に基づくセルフチューニング制御を応用し,ロバストな制御を実現した. 提案した手法は,それぞれのベンチマーク問題におけるシミュレータでその有効性が確認できた.
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