Research Abstract |
地震による墓石の転倒は,単に墓石の破損・損壊という物的被害に収まらず,参拝者の人的被害にもつながる非常に深刻な問題である.しかし,地震工学の分野における墓石に関する既往の研究は,いずれも,「墓石の転倒現象から地震動強さを推定する」というものであり,現状では,墓石の耐震設計という概念は全く存在していない.本課題では,来たる大地震に備えるために,墓石の有効な耐震補強工法について,採用実績の多い耐震補強工法に着目し,実験的,解析的研究を通して,補強冷具の力学特注経年劣化特注を把握するとともに,補強冶具の最適な寸法の検討を行う.さらに補強冶具の力学モデルを提案し,補強墓石の耐震解析手法の開発も行う. 平成19年度の主な研究成果は,以下の通りである. (1)振動台実験による連結工法の改良策の検討 金具を墓石間に挿入する連結工法について,連結冶具の寸法や配置を様々に変えた振動台実験を実施した.震度6弱,震度6強,震度7相当の地震動を作用させ,連結工法の効果について検討を行った. (2)補強墓石の地震時挙動再現のための個別要素法プログラムの開発と連結工法への適用 (1)の振動台実験で得られた成果を援用して,開発済の無補強墓石を解析するための個別要素法プログラムに,補強冶具を表現するコードを追加した.連結工法に適用し,振動台実験の結果とあわせて,連結工法における最適な配置や寸法についての検討を実施した. (3)接着工法の接着剤の強度・劣化特性の解明 接着工法については,接着当初は効果を発揮するものの,経年劣化が懸念されるため,接着剤の経年劣化を検討する実験の準備を行った.既往の接着工法を調べ,採用実績の多い接着剤である変性シリコン接着剤を選び,強度劣化を調べるため,引張試験,せん断試験用の供試体を作成した.次年度にウェザーメータによる劣化促進試験を実施する予定である.
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