2007 Fiscal Year Annual Research Report
ダム流入・放出有機物の河川生物供給動熊の解明と生熊系に及ぼす影響
Project/Area Number |
19560509
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
藤野 毅 Saitama University, 大学院・理工学研究科, 准教授 (70282431)
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Keywords | 河川 / ダム周辺生態系 / 流下有機物 / 底生動物 / 物質輸送 / 一次生産量 / 群集呼吸量 / 栄養塩 |
Research Abstract |
2005年10月より試験堪水を開始している荒川水系中津川の滝沢ダムの上流とダム直下を対象に底生動物群集の調査を行った。調査は試験堪水開始前の同年4月から2008年3月まで,ほぼ1ヵ月に1回の頻度で実施した。調査結果および既存データから,試験湛水開始以前からダム上下流間においては生息種数や密度が異なっていることと,試験湛水以降の環境の変化によって下流でこれらがさらに変化したことの2つの形態が確認された。特に試験堪水以降は,下流域のほうがタクサ数バイオマスともに豊かであることがわかった。バイオマスの増加は主に大型のヒゲナガカワトビケラが早々に定着したことに起因する。また,底生動物群集のダム上下流での出水後の回復過程を比較すると,ほぼ同時期に同程度の回復が見られた。ダム直下では,ダムの出現によってリターなどの流下有機物量は大きく減少したが,水温は上昇した。ここで,今回調査した河川の窒素濃度は全国レベルで比較すると極めて高く,別途行ったタイルを用いた現地試験結果から,下流では付着藻類の増殖がより速いことがわかった。以上より,ヒゲナガカワトビケラの早々の定着やタクサ数が増加したことの理由として,高い栄養塩濃度と水温の上昇が付着藻類による一次生産量とその回転率を高くし,剥離したものはリターに代わって主要な餌資源になったことが考えられる。CCA解析結果から,以上の出現優占種と環境要因との対応関係は明確に示された。
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