Research Abstract |
対象干潟上に6本の観測ラインを設置し,2004年5月から毎月地盤高測量を実施している.2005年9月頃に干潟が急激に侵食(50cm程度)されているが,その期間に異常な外力変動は存在しないため,人的要因を調査したところ,2005年7-8月に白川河口で86,000m^3(延長2.4km,幅40m)の澪筋浚渫が実施されていた.この量は白川出水時のシルト流入量にほぼ一致する.また,2008年7月にも同じ場所で約6,000m^3の澪浚渫が実施されていたので,今回の検討では2006年10月〜2007年10月の期間で行った.水位・流速・濁度・塩分の計測はR2ライン上の堤防から沖に約400mのA点,約1,040mのB点および約1,520mのC点の3ヶ所で実施した.土砂収支はシルト・粘土の質量ベースで評価する.土砂収支式の既知量は以下の手順で求める.1)対象領域を小領域に分割し,まず体積変化量を算出した.2006年10月を基準とし,各小領域の中では地盤高を一定と仮定し,観測毎に総和する事で体積変化量を求めた.この体積変化量は,(空隙),(砂),(シルト・粘土)の線形和で表現できるので,シルト・粘土のかさ密度を室内実験から1.0t/m^3とし,その存在割合を10,30,50%と変更しながら質量Q(kg)を算定した.2)白川から流入するシルト・粘土の体積量は栗山・橋本(2004)と同様に河川流量に比例した経験式を使用した.また,その体積量に1)と同様のかさ密度を掛け合わせ質量に変換した.主要な結論は以下の通りである.(1)平常時には潮間帯干潟は堆積傾向を示し,河川流入シルト量の6割が地形変化に寄与する.沿岸方向では潮汐起因のシルト・粘土の流入・流出はほぼバランスしている.(2)出水直後では干潟地形は侵食傾向を示す.これは沿岸方向のバランスが崩れ,より南向きへ流出するためである.以上より,出水時に河川から流入したシルト・粘土は一旦沖まで流出するが,平常時に潮汐によって沖側から運ばれ,潮間帯に再流入するプロセスが示唆された.
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