Research Abstract |
本研究の成果は下記の通りである. 1.熊本市中心市街地を分析対象として,中心市街地の低・未利用地を効率的用途への変更を促し,地域価値を高める支援策の総合的な政策評価手法を提案することである.そのために,無人時間貸し平面駐車場の地権者に対して実施した「土地利用意向調査」と「土地の有効利活用に必要な支援策アンケート調査」の分析結果から,1)地権者の用途変更モデル,2)地価関数の推定,3)費用便益,税収,政策オプション価値といった評価指標によって各種支援策の政策評価を行った.これらの結果より,日本型TIF制度導入の可能性について検討を行った. 2.同地域を対象として,熊本市中心市街地と郊外における人口動態を把握するとともに,「まちなか居住環境に関する意識調査」 によって得られたデータより,まちなか居住と郊外居住の実態,両地域居住者のまちなか居住に対する意向を明らかにした.続いて,まちなか居住者のまちなかへの転居理由,周辺環境に対する満足度評価,周辺環境整備に対する意識構造を分析した,さらに,居住地選択モデルを構築することによって,今後,まちなか居住を促進するセグメントとまちなか居住推進のための施策を検討した. 3.熊本市中心市街地を対象として再開発の事業化スキームを提案した.そこでは,具体的な実証調査研究のための街区を設定し,整備目標と街区の空間構成モデル,整備手法や運営手法などを提案し,ワークショップを通じてこれらのスキームが実行可能かのフィージビリティスタディを行った.さらに,再開発の対象となる街区の全ブロックの再開発を目的としたコミュニティファンドが存在すると仮定し,その最適な資金計画を検討した.その結果,ブロック別再開発や一括型再開発では難しい場合でも,連鎖型再開発では全ブロックの再開発が可能となる場合があることが示された. 4.都心部の交通混雑を緩和するための新たな課金政策としてエリア型課金デポジット制度を提案した.料金変化により交通混雑の解消を目指す施策は多いが,既存の料金の値上げ・新規課金の導入は,利用者の反対に直面し,一般に導入は困難とされている.これらの問題に対し,最近,ピーク・ロード・デポジット制度という,受容性の向上も目指した新たな課金スキームが提案されている.本章では,その制度と原理的に類似しているが,都心部の限定された地域への適用を念頭においた,新たな施策を提案した.
|