2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560539
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小林 一郎 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (40109666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 裕司 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (70315290)
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Keywords | 古構造学 / 独創性 / 橋梁史 / フランス |
Research Abstract |
本研究が目指す古構造学は、現在では利用されなくなった構造を有する橋梁に着目し、それがもつ独創性の由来を明らかにするための手法を確立することを目的としている。 今年度は、事例としてマルク・スガンによって建設されたトゥルノン橋を取りあげた。本橋は、ワイヤーケーブルと補剛桁を用いた世界初の軽量吊橋であるが、ケーブルの数と定着方式、主塔の形状など、既に用いられないものも見られる。本事例では、トゥルノン橋の構造が架橋地の地形によって決定づけられていることを明らかにした。つまり、現代吊橋の原型とされる本橋は、(1)トゥルノンという場所でのみ成立した固有解であること、(2)完成に向けた試行錯誤の過程で生まれたアイデア(ワイヤーケーブル、補剛桁)は普遍性を持っていたと言うことができる。 通常、独創的な橋梁について学ぼうとする場合、その設計者の思考過程の分析に重点が置かれる。こうした手法は歴史研究的な比重が大きいため、実践が困難な場合が多い。トゥルノン橋の事例を通じて、組織、地形、社会条件などといった与条件と構造の関係から、独創性の由来を解明する可能性を見出すことが出来た(平成19年度土木学会西部支部研究発表会)。 さらに他事例として、ブルターニュ地方の官僚技術者であったアレル・ドゥ・ラ・ノエに関する資料調査および現地調査をおこなった。今年度は、主として設計者の経歴・実績に着目し、一地方の技術者として数多くの独創的な橋梁を実現できた背景の解明を試みた。その際、人物の資質ではなく、職歴上の特徴や地域性といった外的要因を整理した。その結果、(1)長期間ひとつの事業に携わることができた、(2)県が中央から独立して事業の計画から施工まで実施できる制度があった、という要件を抽出することができた(第27回土木史研究発表会)。次年度は、アレル・ドゥ・ラ・ノエによって設計されたRC橋と石造アーチ橋に着目した事例研究を実施する。
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Research Products
(5 results)