Research Abstract |
RC造建築物は共同住宅,学校,病院,庁舎,公共建築物などの社会的に重要な建築物に多く使われており,その長寿命化に関する研究開発はきわめて重要な課題である。本研究では,既存RC造建築物の維持保全システムを構築するために,鉄筋が腐食し,コンクリートにひび割れ,剥落が生じた箇所に各種補修工法を施した状況を再現し,長期間暴露した試験体を利用して,補修効果,劣化抑制効果を評価するものである。実験の要因は,(1)劣化原因の強さ…コンクリート中の塩化物量(0.6,1.6,3.2kg/m^3)(2)鉄筋防錆処理材…各種ポリマーセメントペースト系材料,エポキシ樹脂(3)断面修復材…ポリマーセメントモルタル系,樹脂モルタル系(4)表面被覆材…複層仕上塗材E(一般形),複層仕上塗材(防水形)(5)想定斫り深さ…鉄筋の腐食部分が全て露出するまで,鉄筋裏側までとするが腐食部分が少し残った状態まで,鉄筋表面まで,としている。19年度は,解体して鉄筋を取り出し,発せい(錆)面積率までを計測し,実験要因ごとに整理した。その結果は,次のとおりである。 (1)塩化物量が多くなる(3.2kg/m^3)と補修後も劣化が進行し,劣化抑制は困難であり,補修効果も少ない。 (2)試験体を補修箇所,非補修箇所(健全部)およびそれらの境界部に分けた場合,補修箇所の鉄筋腐食の進行は小さいが,境界部では鉄筋腐食の進行が大きく,再劣化する可能性が高い。 (3)鉄筋の斫り方法では,塩化物量が多い場合は,鉄筋の裏側まで斫らないと効果が少ない。
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