Research Abstract |
平成21年3月までの研究で,以下のことがわかっていた。 (1)梁偏心のない接合部においては,緊張PC鋼棒を接合部回りに配すると補強効果がある。ただし,梁主筋付着劣化のため,履歴性状は改善されない。 (2)梁偏心のある接合部においては,緊張PC鋼棒を接合部回りに配しても,偏心面の補強効果が少ない。 (3)梁偏心のある接合部の偏心面に鋼製パネルを圧着させると性状が改善されるが,接合部の損傷は抑制できない。 (4)偏心面の鋼製パネルは初期には有効に働くが,損傷が大きくなると,パネルから肌離れして,効果がなくなる。 そこで,平成21年度は,緊張PC鋼棒から一時離れ,新たに,梁偏心のある接合部について,鋼製水平ハンチ,鋼製鉛直ハンチ,およびアンカーボルトつき接合部パネル鋼板の効果を調べた。その結果,以下のことが明らかとなった。 (1)鉛直ハンチで補強すると,接合部入力せん断力が低減され,接合部損傷抑制に非常に有効である。 (2)アンカーボルトつき接合部パネル鋼板補強は,鋼板がアンカーボルトにより接合部コアコンクリートと一体となるため,接合部補強に非常に有効である。 (3)水平ハンチは,鉛直ハンチほど有効ではないと思われる。 (4)水平ハンチ,鉛直ハンチおよびアンカーボルトつき接合部パネル鋼板を組み合わせて補強すると,極めて弱い偏心接合部であっても,接合部損傷を免れ,エネルギー吸収性能も大きく改善される。 以上のように,鋼製鉛直ハンチおよびアンカーボルトつき接合部パネル鋼板の効果が著しいことが解った。これらの結果は、実用的な接合部の耐震補強法がなかった状況を大きく変える、意義ある成果と考えている。なお、緊張PC鋼棒補強は、鉛直ハンチ等が使えない接合部の補強法として、提案していきたいと考えている。
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