Research Abstract |
(1)国丙外の文献調査Dampnessに関する研究は日本では極めて少ないため,国際ジャーナルによる文献調査を継続して実施した。最近では,中国,韓国,台湾などのアジア諸国での調査事例が多く見られ,湿度に関連する健康上の問題が指摘されている。本研究により収集された文献はスプレットシートに蓄積整理し,約350件の文献をデータベース化した。 (2)ケース・コントロール研究に基づく実測調査の実施 ケース(患者群)とコントロール(対照群)を対象として,室内の温湿度環境,微生物濃度居住者の体調に関する長期実測を継続して実施した。 調査対象はケース群が5件,コントロール群が5件の住宅であり,いずれの住宅も築4〜8年であり,大半の住宅において断熱気密施工,暖房・換気設備が施されている。居住者の健康状態は,全体的に子供の症状が重く,13人中12人は医師による診察を受けた経歴があり,アレルギー性鼻炎が5人,アトピー性皮膚炎が6人,気管支喘息が3人,さらにアレルギーテストによりハウスダストに対する陽性反応を持っている子供が3人見られる。現在も6人の子供は薬を服用することがある。 実測調査により症状の変化と物理環境の変化を同時に捉え,健康に影響を及ぼしている要因について総合的に考察した。その結果,以下のことを把握した。(1)何らかの健康被害を訴えている住宅では,冬期にカビ数が多くなる傾向がある。(2)室内のカビ数と体調不良症状とに関連性が疑われる事例を把握したが,現段階ではカビアレルゲンの寄与を明確に示すには至らず,さらに検討が必要である。(3)アレルギー性疾患を有する家族がいる住宅ではダニ数は少なく,健康管理上,掃除の頻度が高くなる傾向がある。(4)ハウスダスト中のカビ数は浮遊真菌と関連性が見られ,室内のカビ汚染の原因として無視できない可能性がある。 (3)健康リスク要因に関する考察 ケース・コントロール研究手法に習った長期実測調査により,ケース群の住宅においてカビ数の変動に特徴が見られた。従って,室内環境中のカビがアレルギー性疾患への健康リスク要因である可能性が確認できる。しかしながら,居住者の体調は屋外環境中の花粉の影響も無視できないこともわかった。カビの発生はDampnessと関連深いため,今後は,Dampnessに起因する居住環境要因の量(用量)に対応した健康障害の程度(反応)の関係を導く必要がある。
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