2009 Fiscal Year Annual Research Report
首都圏民間大規模戸建団地の空家・空区画発生メカニズムとその再生に関する基礎研究
Project/Area Number |
19560633
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大月 敏雄 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 准教授 (80282953)
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Keywords | 都市計画・建築計画 / 都市整備 / 人間生活環境 |
Research Abstract |
首都圏戸建住宅団地の最大の課題となるであろう空家・空区画に着目し、その発生メカニズムを登記簿情報等を駆使して解明し、空家・空区画の発生状況や利用方法を操作することを通じての団地再生の方策についての検討を行うことを目的としている。 本年度においては、「主として埼玉、群馬、栃木、山梨を対象に空区画発生メカニズムの解明」と、「空家・空区画の再利用を通した団地再生の検討」の大きく2つのテーマを設定し、研究を進めた。 まず、前者の空区画発生メカニズムの解明については、団地の開発過程と環境形成過程に関する類型化をもとに、特に、栃木県の事例を中心にして、主として登記簿データ等を用い、当該団地に発生する空区画の発生原因を探った。結果は、前年度とほぼ同様に、都心からの交通の利便性と空き区画の発生状況に大きな相関があることと、空き区画の多くが、いわゆる「塩漬け」と呼ばれる、不動産登記の対象であり、開発未着手期間が長い物件であったことが分かった。 次に、後者の空家・空区画の再利用を通した団地再生の検討では、これまで対象としてきた団地以外にも、対象を広げ、町の自治会・町内会長等に対してヒアリング等を行い、空家・空区画に関わる住環境運営上の課題とその解決手法の実態を捕捉した。この中で、空き区画や空家を埋めていく現象として、大きく二つの現象が着目される。 ひとつは、すでに居住している居住者自身やその縁者による利用であり、その促進が地域の荒廃を防ぐと同時に、地域の著しい高齢化を阻止する機能を有していることが推測された。もうひとつは、近隣居住地区との連携である。近隣に若年者向けのマンションや戸建て住宅団地が建設されることにより、古いほうの居住地に移り住む世帯があることが確認された。 このような、血縁、非血縁によるいわば地域循環居住を促進することが、空家・空き区画を再生する、可能性ある道筋であることが示された。
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