2008 Fiscal Year Annual Research Report
近世における木材規格の成立と分布域に関する研究-とくに「丈四」材について
Project/Area Number |
19560646
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
日向 進 Kyoto Institute of Technology, 工芸科学研究科, 教授 (60111994)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 剛佐 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (20293988)
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Keywords | 建築史・意匠 / 木材規格 / 近世水運 |
Research Abstract |
民家調査、市町村史編纂等の成果によって収集された普請帳や木寄帳などを素材として、用材の寸法(材種別の長さ、断面)と使用部位について調査した。またそれらの生産地についても出来る限り明らかにした。当該年度は鳥取県西伯郡大山町所子の旧家、南門脇家にのこる普請記録『明治三十六癸卯年十月日建物新築改造費帳』および南門脇家の遺構調査を行うことによって、明治末〜大正期の豪農の民家普請の特徴と用材産出の状況を研究した。即ち、南門脇家の普請は、所子近隣のほぼ固定された職人たちによって進められたこと。建材調達地として、所子集落周辺に加え、美保湾岸の商工地域である淀江、米子、境がよく登場すること。遠方からの建材の大半は座敷造作材で、西は温泉津から東は岐阜まで広範囲に及ぶこと。遠方からの建材輸送は敷設されたばかりの山陰本線と近世以来の西廻航路が使われたと推測されること。県内近隣では西方からの供給が多く、民家形式の地域性の成立要因が示唆されうること。銘木の調達は、県内における地方博覧会及び物産陳列場での調達機会があったこと。大正期には神社林が材木として流通し、民家普請に使用されていたこと。を明らかにした。このような文書史料の成果と併せて、建築遺構を実測調査することで、対応する部材の寸法と材種を詳細に裏付けられた。このように本年度の成果として、明治末〜大正期の豪農の普請に関わる史料から構成部材に関する研究が行えたことに加えて、史料が反映する遺構の部材を詳細に調査できたことは、建築材料という具体的な研究対象を史的に扱う際に生じる具体性の裏付けの困難さを、遺構調査によって補完したという点で、建築生産史的に意義の深いものである。また、近世の木曽材の規格寸法と材種を、尾張藩「白鳥材木役所」関連史料『白鳥御材木奉行覚書乾』に拠ることで、詳細に考察した。
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Research Products
(2 results)