Research Abstract |
組積造がもたらした建築上の革新は,構造物の巨大化であったが,当該年度では,レーザースキャニングの技術を用いて,オスティアに残る建築物の実測を行った。とくに,カピトリウムなどの巨大建築物においては,この実測方法が有効であることを示した。壁面をオルソ画像によって実測する手法は,今後の研究の発展の可能性を示しており,非常にその意義は大きい。さらに,建築資材としてレンガが一般的となった後も,石材を用いて舗装され続けた道路について,土木都市計画的な視点から,計画性を指摘し,その実現のためには石材が依然として有用であったことを示した。道路面の凹凸によって,道路上の排水をコントロールするという発想は,古代西洋都市史においては,未だ考察されていない新しい考え方であり,本研究では高度な施工技術の一端が明らかにされた。また,エジプトにおける石材の生産が古代末期にも盛んであったこと,さらに短い操業期間の中で集中的に生産が行われていたことを示し,古代末期においても,石材の有用性は決して失われることは無かったことを示した。石灰岩は大理石に代表される一部の装飾的な石材として研究されてきたが,本研究では,石材が大量に,かつ組織的に生産される一般的な資材であったことを示しており,古代末期の石灰岩の用途について,さらなる研究が待たれる。最後に,研究に不可欠な基礎データである遺跡地図について,レーザー実測の結果から,修正を加えたことは学術的な意義は大きい。
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