2007 Fiscal Year Annual Research Report
院政期貴族住宅における居住形態と建築構成に関する研究
Project/Area Number |
19560648
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
溝口 正人 Nagoya City University, 大学院・芸術工学研究科, 准教授 (20262876)
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Keywords | 貴族住宅 / 院政 / 居住 / 建築 / 藤原兼実 / 玉葉 |
Research Abstract |
本研究の目的は、建築構成と居住形態との関係を分析することによって、院政期貴族住宅の空間的実態を解明することにある。具体的な作業としては、文献史料をもとに建築平面など具体的な建築構成が明らかとなる事例において、居住者がどの殿舎で起居していたかという居住形態を明らかにし、建築構成とどのような関係にあるかの事例分析を重ねる。その結果として院政期貴族住宅の住まいとしての空間的な実態と時代的な変遷を解明するものである。このような目的のもとで、本年度は分析の基礎データとなる文献史料の整理・検討による建築構成に関するデータ収集の段階として、まず可能な限りの悉皆的な文献の調査を行い、各住宅で確認される殿舎名称の異動・利用者・利用目的などの属性に着目しながら貴族住宅の建築構成に関する記述をできるだけ網羅的に収集した。次に収集した資料を事例ごとにデータを整理し、居住形態と建築構成の相関に着目しつつ傾向を把握することとした。この事例収拾段階では、次年度以降の詳細な分析対象となる、居住者の利用期間が明確で、どの殿舎で起居していたかという居住形態がある程度把握できる事例に着目した。特に居住者についての言及が確認できる史料として、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した摂関家貴族である藤原兼実(1149-1207)の日記『玉葉』の詳細な分析を主たる作業に充て、藤原兼実の家族の同居の実態と建築的な対応関係を整理した。その成果は『平安末期貴顕の住まいの様相-藤原兼実の冷泉万里小路殿をめぐって-』(『芸術工学への誘い』X II所収)としてまとめた。この論考では、居住者と居所との対応関係を、従来は必ずしも明確に認識されていなかった敷地内の領域という観点から明示し図示した。
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Research Products
(1 results)