2009 Fiscal Year Annual Research Report
近代上海租界地における日本租界の形成過程と空間構成に関する研究
Project/Area Number |
19560649
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
大場 修 Kyoto Prefectural University, 生命環境科学研究科, 教授 (20137128)
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Keywords | 上海 / 日本人居住地 / 日本人用住 / 北四川路 / 虹口地区 / 日本人小学校 / 租界 |
Research Abstract |
1. 研究の意義と重要性 本研究は、イギリスと日本による上海租界地の形成過程とその特徴を史的背景と共に詳細に解明した。従来、その特異な文化性や国際性から数多く研究され諸書の題材となった上海租界について、本研究はその都市空間レベルにおける基礎的フレームを提示した点が重要である。しかも、研究の過程で作成された多数の図版や図表は実証的かつ精度の高さから資料的価値が高く、今後の上海租界を扱う諸研究が前提とすべき基盤的成果として意義深い。 2. 研究内容 本年は、日清戦争(1894年)後の日本が、イギリスがすでに用意した上海租界という「下地」に、どのように自らの拠点を作り上げたのか、日本による上海進出の基本戦略を探った。すなわち、上海日本居留地の設置を廻る日本側の動向、及び同時期のイギリスによる都市開発事業を詳細に捕捉することにより、日本の上海進出が直面した課題とその対応策から、日本による上海進出の動向、及び日本の上海に対する真の意図を明確にした。 あわせて、日本が上海で実際に行った都市開発活動(港湾施設の建設過程、及び土地開発活動)を検討し、さらに日本により造られた都市基盤や建築物によって成立した都市空間の特徴とその意味を探った。 その結果、日本は、「専管居留地」という枠組みを越え、上海全域に渉り、都市施設の建設権利の入手に成功する過程を具体的に明らかにし、さらに、上海日本居留地の設置権利をもって、中国政府と上海から江南諸都市間の水路交通網の整備権利と交換する過程を明確にした。以上のように本年は、日本による一連の上海進出過程を明らかにしつつ、同時に上海はあくまでも江南地域に進出するための拠点であるという日本の真の意図を明示した。 以上、本研究は、日本がイギリスとのせめぎ合いの中で、イギリス人の都市開発動向や開発費用のバランスを考慮しつつ、主に経済・生産活動に関わる商業、工場施設を、分散させつつも上海租界に持ち込んだその過程を明確にした。しかし、明治末期から1930年代に至るその過程は、日英における上海での政治、経済力の格差を上海の都市空間に鮮明に浮き彫りにした過程でもあったことを示した。
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