2007 Fiscal Year Annual Research Report
室町時代〜江戸時代前期における建築工匠の系譜と活動形態に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19560652
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
浜島 一成 Nihon University, 理工学部, 研究員 (80451318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 正夫 日本大学, 理工学部, 教授 (50059515)
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Keywords | 室町時代 / 江戸時代 / 建築工匠 / 伊勢神宮 / 東寺 |
Research Abstract |
平成19年度は、研究期間の初年度にあたる。そのため、鎌倉時代から江戸時代初期に至る建築工匠に関する基本史料の収集・整理を行った。特に、寺社付属(神宮文庫等)もしくは、公的機関の図書館・資料館(国立公文書館等)において、工匠資料の有無の確認等を行ない、一部の寺社においては、一定の成果を得ることが出来た。特に、伊勢神宮においては、16世紀後半期における造営組織(作所)と建築工匠(頭工・頭代・小工)の活動内容について分析を加えた。応仁の乱の後に行なわれた永禄6年と天正13年の工事では、造営費用が乏しいため、作所と建築工匠の話し合いにより、まず工事全体の請負金額3000貫文が決められる。そして、永禄6年の工事では、正殿に関しては、山入、木作始、立柱・上棟といった重要な工事の区切りごとに、改めてそれぞれの請負額が決められ工事が進むのに対し、正殿以外では、建物ごとに個別あるいは一括して、請負金額が改めて決められる。ところで、永禄6年の工事や、天正13年の正殿等の工事では、従来からの手間請負が採用される。しかし、天正13年の工事の終盤に行われた上記主要建物以外の工事では、手間賃と材料費の一括支給を受ける請負が、式年遷宮としては始めて採用される。これは、天正13年の工事が、永禄6年のように、工事の停滞期に禁裏等から造営費用の寄進を受けるといったような、造営費用の増額が見込めないことから、残りの建物については、手元に残った造営費用で工事を完成させるため、建築工匠に手間賃と材料費の一括支給を行ったと考えられる。以上のように、中世末から近世初めにかけての、伊勢神宮等における建築工匠の活動形態の一端が明らかになりつつある。これにより、従来未開拓であった当該期の建築工匠史研究の空白部分を埋めるものになるといえよう。
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Research Products
(2 results)