2007 Fiscal Year Annual Research Report
北海道の近代以前における和人とアイヌ民族の建築活動に関する研究
Project/Area Number |
19560659
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
小林 孝二 History Museum of Hokkaido, 学芸部, 研究員 (80142090)
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Keywords | 中世期 / 近世期 / アイヌ建築 / 住居 / 柱穴 / 平地住居 / 倉 / 熊檻 |
Research Abstract |
本年度はアイヌ民族の建築に着目し、その特徴についてアイヌ文化成立期(13世紀前後)から近世期末(19世紀後半)における建築活動とその所産である建築の特徴を明らかにし、同時に近代以前の建築と既往研究や現代の復元された建築の共通する点と異なる点についても検証した。 研究対象資料としてアイヌ民族の建築を描く近世期の絵画資料とアイヌ文化期を対象とする発掘成果(発掘報告書)を集成・整理し、アイヌ文化成立期から近世期末のアイヌ民族の建築を研究するための基礎資料を構築した。 本年度に明らかになった近代以前のアイヌ建築の特徴は以下の通りである。(1)住居は平地式、住居に付属する建物は高床式が主体で、住居と倉の高床上本体の外観・材料は共通する点も多い。(2)平地住居の平面形は付属屋を伴わない単室形住居が先行し、その後、付属屋を伴う平面形が現れ、両者は併存し、付属屋を伴った住居が主体となって行った。(3)住居の柱配置は短辺の柱間が奇数のものが多く、短辺中央の柱間が出入口や神窓であった可能性が考えられる。(4)柱の建立方式は住居が全て打込形式、住居に付属する建物は堀込形式と堀込と打込を併用する形式がある。(5)柱間寸法は住居では人体寸法による基準寸法の存在が想定できるが付属建物では確認できない。(6)小規模な住居は地上で小屋組を組み立て柱上に乗せ、大規模な住居は柱の上で小屋組を組み立てる建築構法である。(7)住居は小径木材で軸組・小屋組を組立て、小屋構造形式は多様で、室内に梁を架けないものも多い。 以上の研究を基礎として、北海道工業大学大学院へ学位請求論文(「アイヌ文化成立期から近世期末におけるアイヌ民族の建築に関する研究」)を提出し、平成20年3月に博士(工学)の学位を授与された。
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Research Products
(3 results)