2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560669
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Research Institution | Ishinomaki Senshu University |
Principal Investigator |
吉原 章 Ishinomaki Senshu University, 理工学部, 教授 (40166989)
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Keywords | ブリルアン散乱 / グラニュラー磁性膜 / スピン波 / 交換相互作用 / 電気抵抗 / マグノン抵抗 |
Research Abstract |
TM-Al-O (TM=Fe, Co)強磁性膜のスピン波散乱実験により、交換磁場HEと室温電気抵抗値ρの間に逆二乗則ρ∝HE^2が成立することを昨年度報告した。成果を論文として完成させる上で、抵抗の温度変化が重要と考え、東北大金研低温物質科学センターと共同で4.2Kまでの測定を行った。論文をJPSJに投稿し、2008年9月号に掲載された。この研究の意義は、直接測定が困難な微粒子間交換磁場の大きさを、逆二乗則を適用して測定が容易な電気抵抗測定から評価する手法を確立したことであり、グラニュラー強磁性薄膜材料開発に大きく貢献することが期待できる。 電気抵抗の温度変化を詳しく調べると、20K以下の低温ではlogT項が現れ、140K付近までの温度範囲ではT^2項が支配し、フォノン散乱によるT^5項は全く観測されないことが分かった。ブリルアン散乱で強磁性スピン波が観測されたこと、理論からはスピン波散乱抵抗は低温でT^2則に従うことから、このT^2則はスピン波散乱に起因すると考えられる。これらは微粒子金属によらないことから、logT項の出現を含めてグラニュラー構造に特微的な温度変化である。更に、4.2K以下の温度で8Tまでの磁場依存性を測定した結果、0.1%程度の大きさではあるが負の磁気抵抗を確認した。これらの温度依存性・磁場依存性の結果をまとめてJPSJに投稿し、論文掲載が認められた。これらの結果は、近藤効果の可能性を含めて、磁気輸送現象における新しい分野を開くものと期待される。2009年8月にカールスルーエで開催されるICM2009で、27Tまでの超強磁場中での測定結果と合わせて発表する。 当初の研究目的に設定したスピン波測定によるCo-Al-Oグラニュラー磁性膜における誘導磁気異方性発現機構の解明とその制御可能性追求は、現在もスピン波測定が進行中であり、残念ながら来だまとまった成果として発表できる段階ではない。今後も目的達成を目指して研究を継続する。
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