2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19560672
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 泰久 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (80303337)
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Keywords | 熱膨張 / フレームワーク構造 / フォノン / 負の熱膨張 / 熱収縮 / 熱容量 |
Research Abstract |
様々な温度領域で用いられる材料の熱膨張率を制御することは工学的に非常に重要であり,これを目的に,熱収縮をする「負の熱膨張材料」の探索・開発が進められている.しかしながら,材料設計の観点から見た場合,負の熱膨張を発現する物質を創造・設計する明確な指針は未だ見出されていない.この指針を見出すために,本研究では,従来報告されている負の熱膨張物質およびその周辺物質について,負の熱膨張の発現と密接に関係する低エネルギーフォノンを系統的に精査し,負の熱膨張を示す物質に見られる共通な特徴である「フレーム構造」・「強い原子間結合力」とあわせて包括的に検証することで,新たな負の熱膨張物質を創造・設計の指針を確立することを目指した. 当該年度は,フレームワーク構造を有する負の熱膨張酸化物およびシアノ錯体に代表される負の熱膨張金属錯体を取り上げた.熱容量測定および分光測定を試みた化合物系については,スペクトル解析によりフォノンの状態密度分布を見積もった.フレームワーク構造を有する負の熱膨張物質全体に対する知見を得るため,これまでに報告されている負の熱膨張物質および周辺物質を精査し,その構造的特徴とフォノンの状態密度分布について整理した.これらの結果から負の熱膨張物質に共通する三つのフォノンの特徴を見出すことに成功した.さらに,この三つのフォノンの特徴が"フレームワーク構造"と"強い原子間結合"に起因することを明らかにし,化学的・構造的特徴と負の熱膨張物質に特有のフォノン特性との関係を明らかにすることができた.この研究成果は,負の熱膨張物質の設計指針となり,新たな負の熱膨張物質の創出および探索に重要な知見である.この研究成果をまとめた論文は現在投稿中である.
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