2008 Fiscal Year Annual Research Report
無機酸化物単結晶の表面自由エネルギー実測法の開発および結晶モルフォロジーの研究
Project/Area Number |
19560674
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
鈴木 孝臣 Shinshu University, 工学部, 准教授 (20196835)
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Keywords | 結晶成長 / 岩石・鉱物 / 固体表面 |
Research Abstract |
今年度は特に結晶のモルフォロジーと表面自由エネルギーに関する理論的解釈に重点をおいて研究をおこなった。今年度は主に天然鉱物を研究対象として、結晶の表面自由エネルギーについて評価を行った。また、これまでの研究の継続として人工の塩素アパタイトおよびルビー結晶の評価も並行しておこなった。今年度は、これまでの実験結果を評価する上での理論が大きく進展した。結晶成長分野で結晶の表面自由エネルギー密度と結晶の成長速度が比例するというウルフ関係式は百年以上前から理論的に言われていながらも実験的な証明がなされてこなかった。当研究者は数年前から実験による結晶の表面自由エネルギーの評価を行ってきた。単結晶の成長には液相での化学ポテンシャルと結晶内部の化学ポテンシャルの差が駆動力となることが知られているが、結晶内部の化学ポテンシャルは結晶の種類によって一定であるとするのが常識である。ところがこれまで当研究者が行ってきた実験結果を説明するためには個々の結晶ごとに、結晶内部の化学ポテンシャルが異なっていると解釈せざるをえないと結論づけられた。この化学ポテンシャルの結晶依存性は結晶核形成の初期段階で生じた結晶内部の転移が原因になっていると考えられる。またこの結晶内部の転移が結晶表面にステップの形で表れていると考えることにより結晶の成長速度と実測の表面自由エネルギーとの関係との合理的な説明が可能となる。一連の研究結果は従来のウルフ関係式が理論的に持っていた意味をより広い範囲での実在結晶に拡張できるものである。
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