2008 Fiscal Year Annual Research Report
スラグ中の珪酸塩ネットワークのフッ素による分断の動的解明
Project/Area Number |
19560741
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
太田 弘道 Ibaraki University, 工学部, 教授 (70168946)
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Keywords | 珪酸塩 / 融体 / 熱伝導率 / 動的構造 / フッ素 / スラグ / ネットワーク |
Research Abstract |
珪酸塩融体は製錬工程において重要な役割を果たす物質であり多くの研究がなされて来た。またその動的構造についても粘性の系統的測定、分子動力学的な手法により解明が進んでいる。高温領域におけるそのフォノンの挙動については二つの異なったモデルが提起されている。珪酸塩はSiO_4四面体が連続したネットワーク構造をとりCaOなどの酸化物を添加すると、このネットワーク構造が分断される。最初に提起されたモデルはCaOなどの酸化物により分断された部分がフォノンの障壁となると考える。このため、ネットワークを分断する酸化物の添加に伴い熱伝導率が大きく低下する。また温度の上昇による分断点における熱振動の増大とともに熱障壁として作用が大きくなり熱伝導率は大きな負の温度依存性を持つ。これに対し二番目のモデルはネットワークの分断点は大きな熱障壁とならず、構造全体としての非周期性がフォノンを散乱し伝播をさまたげると考える。このモデルでは、異種物質の混合により非周期性が増加するため、珪酸塩への酸化物の添加によりフォノン散乱が増大し熱伝導率は増大する。しかし融体では非周期性がもともと高いことから珪酸塩融体の熱伝導率の組成依存性は小さいと考える。しかし議論の基礎となる実測データは実験が困難であることから、特に高温においては従来は十分なデータが得られていなかった。最近申請者らは、高温はで問題となる熱放射や対流の影響をほとんど受けることなく珪酸塩融体の熱伝導率を測定する手法を開発した。本研究ではこの手法を用いて特にネットワークを分断する作用の高いCaF_2を含む融体の熱伝導率測定を行うことによりネットワーク分断の珪酸塩融体中のフォノンの伝播におよぼす効果を測定した。その結果CaF_2の添加により熱伝導率は大きく低下することがあきらかとなった。
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