2007 Fiscal Year Annual Research Report
実用材における格子間原子集合体の一次元運動と損傷組織発達への影響の解明
Project/Area Number |
19560837
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 裕樹 Tohoku University, 金属材料研究所, 准教授 (20211948)
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Keywords | 原子力エネルギー / 格子欠陥 / 照射損傷 / 電子顕微鏡 / 分子動力学 / 格子間原子 / 拡散 / 不純物 |
Research Abstract |
最近の分子動力学シミュレーションによると、金属中の格子間原子とその集合体は非常に低い活性化エネルギー(0.05eV程度)で一次元的に拡散可能であることが報告されている。一方実験的には、少なくともTEMで観察可能なサイズに成長した格子間原子型転位ループは安定で、観察中に簡単に移動するものではないとことが古くから知られている。両者の不一致の理由は不明であったが、本申請課題において超高圧電子顕微鏡を用いた電子照射下その場観察法によって、鉄中の格子間原子型転位ループが頻繁に瞬間移動する現象を調べ、この不一致の原因が試料中の不純物にあることをつきとめた。つまり、 (1)もともと格子間原子型転位ループはシミュレーションが予測するように非常に動き易いものであって、 (2)普段静止して観察されるのは、不純物にトラップされているため。 (3)電子照射下では電子の衝突によるはじき出しによって不純物のトラップからはずれて、次の不純物に捕まるまで、本来の一次元拡散がおこる。この一次元拡散は非常に高速であるため、デトラップから次のトラップまで瞬間的に移動したかのように見えるというモデルである。このモデルに基づくと、一次元ジャンプ距離や頻度の不純物濃度依存や電子照射強度依存などがよく説明できることが明らかとなり、より多量の不純物や添加元素を含む実用材料中の一次元運動挙動の解明にとっても重要な基礎データとなるものである。 原子力材料の中性子照射による損傷組織の発達と材料の機械的特性の劣化などに一次元高速拡散過程が関与している可能性が考えられる。また格子間原子やその集合体は結晶格子欠陥の基本要素のひとつであるにもかかわらず、その基本的性質がこれまで正しく理解されていなかったことを明らかにした点も重要である。
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