2008 Fiscal Year Annual Research Report
実用材における格子間原子集合体の一次元運動と損傷組織発達への影響の解明
Project/Area Number |
19560837
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 裕樹 Tohoku University, 金属材料研究所, 准教授 (20211948)
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Keywords | 原子力材料 / 照射損傷 / 格子欠陥 / 透過電子顕微鏡 / ステンレス鋼 / 格子間原子 / 照射脆化 / 不純物 |
Research Abstract |
超高圧電子顕微鏡を用いた電子照射下その場観察法により、いくつかの鉄合金における格子間原子集合体の一次元(1D)運動挙動を調査し以下の結果を得た。 1. 鉄に銅・シリコン・ゲルマニウムを添加した二元合金の1D運動挙動を純鉄と比較した。いずれの元素も数10ppmの添加により1D運動の距離と頻度が著しく低下することが判明した。しかし添加量をさらに増加させた場合の変化は比較的緩やかで、1%添加した合金でも1D運動が観察された。 2. 実用材料である原子炉圧力容器鋼A533Bとオーステナイトステンレス鋼SUS316Lでも、室温での電子照射下において1D運動が確認された。その距離は10nm以下で純鉄に比べると著しく短く、頻度は純鉄の1/10程度であった。また高温では1D運動が起こりにくくなることが判明した。A533Bでは室温で導入した格子間原子集合体を高温に保持すると、その後の室温における1D運動頻度が著しく低下した。高温では炭素、酸素、窒素などの侵入型元素が集合体に偏析して固着することにより、1D運動頻度を低下させたと推察される。 以上の結果から、格子間原子集合体の1D運動には溶質原子や不純物との相互作用が重要であることを指摘した。中性子照射環境下ではカスケード損傷から直接生成された格子間原子集合体は、溶質原子が顕著に偏析するまでの期間に1D運動が生じ易いと考えられる。実用材料でも照射温度や照射強度などに依存して、損傷組織の発達と材料の機械的特性の劣化などに1D運動が関与している可能性があることが示唆された。
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