2008 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛虫のレンズ眼用器官の研究による光受容器としての眼の起源を分子、形態から探る
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19570007
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
池尾 一穂 National Institute of Genetics, 生命情報・DDBJ研究センター, 准教授 (20249949)
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Keywords | 分子進化 / 眼 / 遺伝子発現 / 比較ゲノム / バイオインフォマティックス / 渦鞭毛虫 |
Research Abstract |
眼の進化については、ダーウィンの時代より議論の的となってきた。タコ等に見られるレンズ眼と哺乳類の眼は、両者の系統的距離に関係なく非常に似た構造をしていることが知られている。このように複雑で完成された機能を持つ器官が、軟体動物と脊椎動物という離れた系統で出現したことは大きな謎である。全ての眼は起源が単一なのか。そこで、我々が注目したのが渦鞭毛虫である。渦鞭毛虫は単細胞の生き物であり神経細胞は当然持たない。しかし、彼らの一部は、ある意味完成されたレンズ眼を持つ。この渦鞭毛の眼の起源は何か。我々は、『高度な神経器官としての眼の進化を遺伝子発現の制御システムの進化の観点から比較進化学とバイオインフォマティクスの手法により明らかにする』目的として比較進化学的解析を進めた。具体的には、多様な形態の眼を有する無脊椎動物を主な材料として、I)最も原始的なレンズ眼を持つと考えられる渦鞭毛虫から遺伝子発現プロファイルを得ることを目的にESTの取得とその配列決定。 II)得られたEST配列を他の種(マウス、ホヤ、タコ、プラナリア、クラゲなど)と発現を比較。III)遺伝子発現プロファイルの比較進化学・情報科学的手法を導入した解析により、眼における発現遺伝子セットの再構築をおこない、機能・形態形成に関する生命システムの進化について研究を進めた。 既に渦鞭毛虫のうちレンズ型の眼を持つもの3種を採集し、cDNAライブラリの作成を終了した。その結果、幾つかの眼に関係する遺伝子候補を見つけている。詳細に関しては、現在、論文を準備中である。また、免疫染色により渦鞭毛虫におけるタンパク質の局在を調べたところ、これらのうちのいくつかは、眼に局在もしくは偏在していることが示唆されており、渦鞭毛虫のレンズを持つ器官は、少なくとも機能性分子のレベルでは、他の生物種のレンズ眼に対応する可能性が示唆された。
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