2007 Fiscal Year Annual Research Report
アリーアブラムシ共生関係のレベルがアブラムシの飛翔能力に及ぼす影響について
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19570010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八尾 泉 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 博士研究員 (70374204)
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Keywords | アリーアブラムシ共生関係 / 平均ヘテロ接合度 / マイクロサテライト / 分散 / Tuberculatus属 / 遺伝子多様度 |
Research Abstract |
生物の遺伝的変異の程度を測定するためのより適切な尺度は,「平均ヘテロ接合度」である。これは一つの集団から任意に抽出した二つの対立遺伝子が異なる確率を示しており,「遺伝子多様度」とも呼ばれる。何らかの理由によって,個体の移動が自由にできない場合,この集団は局所個体群となり,近隣の個体だけで配偶が行われるであろう。その結果,1個体の複数の遺伝子座に注目するとホモ接合体の割合が多くなっていると予想される。 アリ共生型アブラムシのコロニーは,アリがいることによってテントウ虫等の捕食者から守られている反面,常にコロニーがアリに包囲されているためにアブラムシは自由に移動・分散できず,交配集団が小さくなっていると考えられる。一方,アリと共生しないアブラムシは相対的に自由に移動・分散できると考えられ,分散した場所で様々な遺伝子型と交配できるであろう。これらの結果,アリ共生型アブラムシの遺伝子座の多くはホモ接合になっており,対照的にアリと共生しないアブラムシはヘテロ接合が多くなっていると考えられる。本研究は,同一の寄主植物上からサンプリングしたアリ共生型/非共生型Tuberculatus属アブラムシの11カ所のMicrosatellite遺伝子座のホモ/ヘテロ接合度を測定し,アリ共生のレベルと遺伝子多様度の関係を考察した。その結果,アリ共生型アブラムシの平均ヘテロ接合度は非共生型より小さかった。つまり殆どの遺伝子座でホモ接合になっていた。また各遺伝子座における対立遺伝子数の比較においてもアリ共生型アブラムシはその数が少なかった。以上のことから,アリ共生型アブラムシは分散が限定された隔離集団になり同類交配が促進された結果,遺伝子多様度が低くなったと考えられる。
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Research Products
(3 results)