Research Abstract |
1.雌の配偶者選好性の検証,及び相対的な性的魅力を操作した雄との配偶実験 グッピーの雄における性的魅力(オレンジスポットの派手さ)に対する雌の選好性を検証するために,配偶させる雄(配偶雄)及び視覚的な刺激のみを与える刺激雄を同時に雌に提示した。その際,配偶雄に比べて性的魅力が高い刺激雄,あるいは低い刺激雄を選ぶことにより,同一配偶雄の相対的な性的魅力を操作した。刺激雄の方が派手で魅力が高い場合,配偶雄の魅力は相対的に低くなるのに対し,刺激雄の方が魅力が低い場合,配偶雄の魅力は相対的に高くなるという予測通り,相対的に魅力を高く操作された配偶雄は,同一配偶雄であっても相対的に魅力を低く操作された場合に比べ,雌に配偶相手として好まれることが確認された。そして,相対的に性的魅力を高く操作された配偶雄と配偶した雌,及び相対的に性的魅力を低く操作された配偶雄と配偶した雌をそれぞれを産子させた。 2.子の性比の検証,及び適応度構成要素の測定 1の配偶実験で得られた子を性差を示す形質が発達するまで飼育し,一腹の子の性比を調べた。雄親の魅力に応じた子の性比調節が雌親によって行われている場合,同一雄の子であっても性的魅力が相対的に高く操作された雄の子の方が息子偏りになるのに対し,子の性比調節が雄親によって行われている場合,相対的な性的魅力が変化しても同一配偶雄の子の性比には差がないと予測される。その結果,同一配偶雄であっても相対的な性的魅力が異なった場合,子の性比にも差異がある傾向が認められたことから,配偶相手の雄の魅力に応じて雌親が子の性比を調節している可能性が高いことが示唆された。また,性判別後も子の飼育を継続し,生存率や成長,繁殖効率などの適応度構成要素における息子と娘の差異,及び性比との関連を分析し,親による子の性比調節の適応性を検証している。
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