Research Abstract |
日本、韓国におけるブルーギルの遺伝的多様性を明らかにするため,採集した日本66地点1,617個体,韓国3地点66個体,北米15地点319個体の計2,002個体についてミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプロタイプ分析とマイクロサテライトDNA(MS)の多型分析を行ったところ,以下の事が明らかとなった。1)MSの分析結果はmtDNAの分析結果と同じく,日本、韓国産ブルーギルが全てアイオワ州グッテンベルグ由来,即ち1960年に導入された15固体由来の可能性を強く支持した。2)遺伝的多様性はmtDNAとMSの何れにおいても琵琶湖、淀川水系と1960年代に移植された水域において最も高かった。地域別に見ると近畿地方が最も遺伝的多様性が高く,次いで中部,東海の順となり,逆に東北地方が最も低かった。この結果は各生息地におけるブルーギルの侵入年度とほぼ対応しており,侵入年度の新しい集団ほど遺伝的浮動により遺伝的多様性が低下している事が確認された。3)中国、九州の一部の集団においては琵琶湖集団に存在しないMSの対立遺伝子が確認され,日本におけるブルーギルは必ずしも全てが琵琶湖由来ではなく,分布拡大の中心は複数存在することが示唆された。 ブルーギルの適応放散に伴う形態形質の変化を明らかにするため,日本57集団2,654個体,韓国3集団66個体の計2,720個体についてSoft-X撮影を行い,鰭条数、脊椎骨数の計数を行った。その結果,各集団における計数形質の平均値は,いずれの形質においてもMSの遺伝的多様性の低下と共に集団間の差違が拡大する,即ち日本国内におけるブルーギルの表現分散は年と共に拡大していることが明らかとなった。この理由として量的形質(QTL)の自然選択における中立性と遺伝的浮動の影響が考えられた。 適応形質の遺伝解析(Qst-Fst解析)を行うため,日本国内の遺伝的多様性の異なる代表的な10集団についてサンプリングを行った。採集した個体は岐阜県河川環境研究所に持ち帰り,飼育、繁殖実験に供した。
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