2009 Fiscal Year Annual Research Report
特定外来種ブルーギルの日本定着成功要因についての進化生物学的研究
Project/Area Number |
19570018
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
河村 功一 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 准教授 (80372035)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古丸 明 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 教授 (10293804)
米倉 竜次 岐阜県河川環境研究所, 主任研究員 (40455514)
|
Keywords | 外来種の定着成功 / 遺伝的分化と形態分化 / Fst-Qst解析 / 適応放散 / ブルーギル / 分子進化 / 自然選択 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
遺伝的多様性は、外来種の定着成功を決定する主要因の一つとされている。日本各地の集団についてマイクロサテライト情報を基に、ブルーギルの定着成功の理由について考察を行った。主成分分析において、日本集団の起源とされるGuttenberg集団に最も近かったのは琵琶湖を含む1960年代に定着した集団であり、1970年以降に定着した集団は侵入年度の遅れと共にGuttennberg集団との間の遺伝的距離が増加した。日本国内の集団において集団間の遺伝的距離と地理的距離の間に最も有意な負の相関が見られたのは琵琶湖集団であり、各集団におけるボトルネックの出現頻度も琵琶湖からの距離に伴い増加した。この事は、日本におけるブルーギルの多くが琵琶湖集団に由来するだけでなく、ブルーギルの遺伝的多様性がこの集団により支えられている事を意味している。即ち、日本におけるブルーギルの定着成功は琵琶湖という巨大生息地の開拓による遺伝的多様性の維持と広範囲な人為的移植の2要因に因るものと考えられる。 外来種の定着要因として現在、「表現型の可塑性」と「局所適応」の2つの進化学的仮説が提唱されている。これらの仮説の相対的重要性は、同じ外来種でも侵入から分布拡大までのプロセスにおいて変化する可能性がある。この事を明らかにするため以下の実験を行った。ブルーギルの9集団それぞれに対し、全父半兄弟デザインにより計180家系を作出し、ブルーギルが産卵における水温の上限(30℃)および下限(20℃)で、受精卵から仔魚までの生残率に違いがあるかを量的遺伝解析により検証した。比較的侵入年代の古い集団では、20℃と30℃における生残率の違いは小さかったのに対し、侵入年代の新しい集団では、30℃の生残率に比べ20℃の生残率はかなり低かった。この事は、日本への侵入初期においては未知の環境に柔軟に対応できる表現型可塑性が重要であったのに対し、侵入後期においては局所適応が重要であった事を示唆している。
|
Research Products
(8 results)