2007 Fiscal Year Annual Research Report
個葉の温度環境への順化・適応機構に果たす葉内CO2拡散過程の役割の解明
Project/Area Number |
19570025
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坂田 剛 Kitasato University, 一般教育部, 助教 (60205747)
|
Keywords | 個葉光合成の最適温度調節 / ルビスコ / 葉内拡散コンダクタンス / 低大気圧 / イタドリ |
Research Abstract |
高標高域では、大気圧が低下するにともない気温も低下する。一般に、個葉の光合成の最適温度は生育温度にほぼ一致することが知られており、高標高域に生育する植物の個葉光合成の最適温度は低地に生育する植物よりも低いことが予想される。また、低大気圧下では大気中の光合成反応の基質であるCO_2とその競争阻害物質O_2がともに減少し、光合成速度に影響しているが、その影響の大きさには葉内のCO_2拡散のしやすさ(g_i)や葉中のCO_2固定酵素ルビスコ(E)の量が影響することが示されている(Sakata and Yokoi 2002;Sakata, et. al.2007)。したがって低大気圧下での個葉光合成の温度依存性にもg_iやEが影響することが予想され、高標高域に生育する植物の光合成の最適温度調節に一定の役割を果たしている可能性がある。 本申請課題の目的である、植物の温度順化・適応の重要な要素である個葉光合成の最適温度調節のメカニズムを明らかにするため、低地(標高100m)と富士山五合目付近(標高2250m)に生育する二つのイタドリ個体群を材料に、個葉光合成速度の温度依存性をCO_2分圧と0_2分圧を変えながら実測し大気圧が個葉光合成の温度依存性に及ぼす影響の検討を行った(模擬低大気圧実験)。その結果、低地個体群は葉温30℃付近が個葉光合成の最適温度だったのに比べ、低大気圧下の高地個体群の最適温度は25℃付近であることが示された。低大気圧によって個葉光合成の最適温度が低下する現象は、ホウレンソウより抽出したルビスコの温度依存性(Jordan and Ogren 1984)やg_iとEをパラメータに用いた数値シミュレーション解析からも定性的に確認することができた。以上の解析結果から、高標高の低温域に生育する植物が光合成最適温度を低く調節しているメカニズムについて考察を行い、本年度に予定していた研究実施計画を遂行することができた。
|
Research Products
(1 results)