2009 Fiscal Year Annual Research Report
個葉の温度環境への順化・適応機構に果たす葉内CO2拡散過程の役割の解明
Project/Area Number |
19570025
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坂田 剛 Kitasato University, 一般教育部, 助教 (60205747)
|
Keywords | 個葉光合成の最適温度調節 / ルビスコ / 葉内拡散コンダクタンス / 低大気圧 / イタドリ |
Research Abstract |
高地(標高2250m)の低気温環境に生育するイタドリと低地(標高100m)イタドリの個葉光合成を比較した結果、高標高イタドリの光合成最適温度が低いことが、本研究課題によって前年度までに明らかになっている。この最適温度の違いを説明しうる要因を明らかにするために、個葉光合成の数値シミュレーション解析を行った結果、葉内のCO2拡散コンダクタンスが小さい場合や、葉内にCO2固定酵素ルビスコが多い場合、さらに大気圧が低い場合にも光合成の最適温度が低下することが新たに示された。実際の高標高イタドリで、光合成の最適温度を低くしている機構を探るため、既報のホウレンソウのルビスコの酵素化学的パラメータを用いて光合成の温度依存性の解析を行ったが、ホウレンソウのパラメータはイタドリの光合成解析に適用できないことが確認された。そこで、イタドリのルビスコの酵素化学的パラメータを精度よく決定する手法の検討を行った結果、測定溶液中に混入する大気のCO2量がパラメータ推定に強く影響することが明らかになった。CO2混入量を推定する方法を新たに開発し、精度良くイタドリのルビスコの酵素化学的パラメータを決定した結果、イタドリのルビスコはホウレンソウのルビスコに比べCO2への親和性が若干大きいことが示された。この違いが、光合成の最適温度に与える影響の解析を行った。高標高に生育している植物の葉は一般に窒素含量が多く、ルビスコが多いこと、葉内拡散コンダクタンスは高標高に生育する植物の葉で小さいことが、研究代表者らの行った過去の研究によって示されており、これらの葉形質は光合成速度の最適温度を下げ、高山での物質生産を大きくする調節機構として機能している可能性が、本研究によって示された。今後は、この可能性を高山に生育する複数の植物個体群で検証することが必要であろう。
|