Research Abstract |
春日山原始林(世界文化遺産、国指定天然記念物)域の照葉樹林群集に大きな負荷を与えている外来種(ナギとナンキンハゼ)の侵入・拡散とシカの食害という二つの生物的要因の相互作用を、野外実験系の設定とモニタリングによって解明するために,2007年9月に,シカが立ち入らない柵を設置する実験モニタリングサイトを春日山原始林に構築した(文化庁および奈良県・市の調査許可申請済)。計7カ所の防鹿柵設定後,春,秋の年2回,新規参入実生(木本),枯死木本をナンバーテープによって個体識別しながら,追跡調査を行った。また,年1回,草本の組成について,確認した。さらに,柵内に設置したシードトラップを設置し,シードトラップに入った種子の同定および種子数をカウントし,森林内に種子の散布がどの程度,森林更新に寄与しているのか,シカの影響はどの程度,負荷を与えるのかを評価するための調査を継続中である。 また,自動撮影装置を計,8カ所に設置し,シカ,イノシシ,ネズミといった中型〜小型のほ乳類,フクロウ,カケスなどの鳥類が写っており,現在,シカの雌雄同定,個体数の解析などを行っているところである。防鹿柵設置後,1年経過した時点で,もっとも顕著に把握できたのは,実生消失が,防鹿柵外で著しいこと,草本の多様性が場所によっては,著しく柵内で増加していると言うこと,草本の高さが柵内で顕著に高いことなどである。実験設定することにより,シカの森林に対する影響を定量的に評価できるものと考えているが,ナギとナンキンハゼの外来種が,どのような影響につながるかについては,まだ十分解析がされていない。シードトラップの結果についても,現在解析している段階である。 今年1年さらに,追跡調査を行い,種子流入,実生の再残,外来種の他種への影響,シカの森林利用などに関する情報を総合的に評価し,実験系の成果をまとめたいと考えている。
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