Research Abstract |
2007年秋に設置した防鹿柵で得た二年間のデータを解析し,2009年度日本生態学会で口頭発表した。外来樹木ナギとナンキンハゼ実験区でその効果は異なるものであったが,共通していることは,林床植生の種数及び植被率に顕著な変化はみられないことである。さらに実験を継続することにより変化することを期待するが,シカの森林への影響が100年以上にわたっており,また密度も極めて高い状態(20-30頭/Km^2)が続いていることから,数年という短い期間では森林回復(多様性及び構造など)は困難であることが示唆された。柵の有無(P, NP),外来樹木の有無(C, NC)の組み合わせで4パターン(PxC, NPXC, PxNC, NPXNC)を1セットとして,ナギ実験区(100m^2)3ヵ所,ナンキンハゼ実験区(100m^2)3ヵ所,外来樹木を含まないコントロール実験区(800m^2)での木本実生動態を解析した。その結果,ナギ実験区では,クリッピングとシカ柵効果によって,コジイの死亡率(2年間)が有意に低い結果が得られた。シカがあまり採食しないクロバイ,イヌガシ,ウリハダカエデなどでは有意差がみられなかった。その一方,クリッピングしたナギの萌芽再生能力が顕著で,死亡率がきわめて低く,今後もナギが照葉樹林に拡大することが十分に予測された。ナンキンハゼ実験区では,クリッピング効果はみられなかったが,柵効果は若干みられた。ナギ同様に,ナンキンハゼに再生能力は高かった。コントロール実験区ではツクバネガシの死亡率が高く,ブナ科の実生に対しては,防鹿柵の効果がみられた。クリッピング及び防鹿柵による組成的な変化は乏しく,森林の多様性を回復するには,時間がかかるため、さらに継続的な調査を続ける必要がある。
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