2008 Fiscal Year Annual Research Report
淡水域の生物多様性と生態的機能の基盤となる多様な植生の維持機構の解明
Project/Area Number |
19570029
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
高村 典子 National Institute for Environmental Studies, 環境リスク研究センター, 室長 (80132843)
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Keywords | 生物多様性 / 湖沼 / ため池 / 水生植物 / 連続性 / 生活形 / ヒシ / シラルトロ湖 |
Research Abstract |
本研究では淡水域の生物多様性の保全を、現実的な行政施策に結びつけるための根拠を提示することを目的とし,淡水域の生物多様性と生態的機能の基盤となる多様な植生の維持機構を生態的な観点から明らかにするための研究を実施した. 具体的には,ため池の多い兵庫県北播磨・東播磨地域をフィールドとして、まず、ため池に成立している水生植物群落の種数や水生植物種の有無を池の種多様度の指標と考え、種多様度をもっとも説明する周辺の土地利用ならびにその空間スケールを明らかにした。次に、最適な空間スケールの下での土地利用に、池の面積と池の水深を説明変数として加えることで、種多様度と周辺の土地利用、池面積、池の水深の関係を明らかにした。 また、この地方に多い重ね池を活用し、池の連続性(connectivity)が浮葉植物と沈水植物の種数やその出現の有無に与える影響を明らかにした。ハビタット間の空間スケールで働く「生育場所間の連続性」とハビタット内の小スケールで働く「生育場所の水質」の相対的重要性について検討を加え、浮葉植物では前者が、沈水植物では後者がより重要であることを示した。そのため、浮葉植物種を保全する場合は水域の連続性について、沈水植物種の場合は水質などの局所スケールの環境保全を重視すべきであるとの知見を得た。 最後に、近年、富栄養化などにより急速に沈水植物群落が衰退している釧路湿原シラルトロ湖の調査研究から、沈水植物の現存量を説明する環境要因として、水深、ヒシの現存量、底質の礫と泥の割合が重要であることを示した。さらに、ヒシに対する応答が沈水植物種の根の張り方に大きく依存していることが明らかになった。今後、ヒシ群落が拡大すると、消失するリスクの高い沈水植物種の特徴などについて明確になったことで、優先的に保全すべき種類などが特定された。
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