Research Abstract |
植物細胞の増殖にはオーキシンが不可欠であるが,それがなくても増殖する場合があり,馴化と呼ばれている。R. Gautheretにより60年以上前に発見されたこの現象は,今日なおその分子機構は不明である。代表者が確立したタバコBY-2細胞系は,増殖にオーキシンを必要とするが,そこに由来する2B-13株はオーキシンが不要である。従って,2B-13株で何故オーキシンが要らないか解明すればそれは,馴化の機構解明につながる。この目的のために,2B-13細胞が細胞外へ分泌する細胞増殖因子が,オーキシン飢餓で増殖を停止したBY-2細胞の細胞分裂を誘導することから,その因子CDFを精製したところ35kDaの糖タンパク質であった。 ところが,BY-2細胞には上記CDFと分子サイズの異なる類似の糖タンパク質が二種類あることが判明しているが,その精製がこれまで達成されていなかった。そこで,新たにMiniQカラムで精製した分画の一つに生物活性が確認されたので,それをもとに更に精製過程のスケールアップを行い,現在最終段階にあり,BY-2細胞の活性分画の分子的同定の一歩手前にまで到達した。この結果は,一ヶ月以内に確定できる予定であるので,懸案の課題が解決されると期待している。その結果次第であるが,既に明らかにした糖タンパク質との関係が判明すれば,求める答えの一端が解決されることになるはずである。更にこの結果は,本年度のもう一つの課題である,P-Glycoproteinと推定されるCDF分子の機能に関する鍵の解明に繋がる。これらにより,細胞分裂誘導因子の全体像が判明するものと期待され,それは馴化に対しての分子的説明を可能にすると予想される。
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