2007 Fiscal Year Annual Research Report
地球の大酸化イベント酸素危機が導く光合成生物の適応進化
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19570036
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 祐一 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (80222264)
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Keywords | クロロフィル / ラン藻(シアノバクテリア) / 嫌気的環境 / イソサイクリック環 / オキシゲナーゼ / ヒドラターゼ / ラジカルSAM / プロトクロロフィリド |
Research Abstract |
光合成生物の酸素環境への進化適応について、クロロフィル生合成系のイソサイクリック環(E環)の形成反応に焦点を当てて解析を行った。E環は、Mg-プロトポルフィリンIXモノメチルエステル(MPE)シクラーゼによって、MPEの13位メチルプロピオン酸が酸化的環状化することにより形成され、環状化に伴い13^1位にオキソ基が導入される。この反応を触媒するMPEシクラーゼには進化的に異なる2つの系が知られており、一つは酸素分子を13^1位にオキソ基に取り込む反応を行う一種のオキシゲナーゼ(酸素依存型MPEシクラーゼ)であり、もう一つは13^1位にオキソ基の酸素原子を水分子から取り込む一種のヒドラターゼ(酸素非依存型MPEシクラーゼ)である。光合成黎明期の地球環境が嫌気的であったことを考慮すると、酸素非依存型MPEシクラーゼがより起源が古く、酸素レベル上昇に伴って酸素依存型MPEシクラーゼが新たに進化してきたと推察される。ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803においてどちらの系がクロロフィルの5員環形成に関わっているのかを検討した結果、2つの酸素依存型MPEシクラーゼ遺伝子(sll1214、sll1874)が環境の酸素レベルに応じて使い分けられており、酸素非依存型MPEシクラーゼが機能しているという証拠は得られなかった。現在のラン藻は、進化の初期段階において酵素非依存型MPEシクラーゼから酸素依存型MPEシクラーゼへの置換が起こり、現在のラン藻はすべて酸素依存型MPEシクラーゼによってE環形成を行っていると推察される。さらに、現在、クロロフィルとヘムの共通生合成系において、酸素依存型と非依存型が共存すると考えられるコプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼの反応における役割分化について検討を加えつつある。
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