2007 Fiscal Year Annual Research Report
アユモドキの"純淡水回遊"から魚類の回遊を普遍的に制御する環境/内分泌要因を探る
Project/Area Number |
19570057
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂本 竜哉 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 教授 (10294480)
|
Keywords | 回遊 / 環境 / ホルモン / 適応 / 保全 / 国際情報交換 / 国際研究者交流 / アメリカ合衆国:デンマーク |
Research Abstract |
初夏に成熟魚が河川本流から用水路を通って産卵場所の一時的水域まで遡上し、産卵を終えた成魚と当歳魚は河川へ下るといった淡水域に限った回遊をすることを確認した。冬季の生息場所は、バイオテレメトリーの手法により調査する予定である。現在、各種発信機の性能を検討しており、装着の影響は飼育環境下でも調べている。また、遡上は水位上昇や新月の後であることも見出した。さらに、遡上してきた成魚が、水位上昇後、数時間のうちに一斉に産卵を行うことも発見した。また、産卵は単なる水位上昇後でなく、一時的水域が形成された直後に限られることを解明した。飼育下での環境要因の操作からは、遡上-産卵の至近要因は、水位上昇ではなく、植物が茂った陸地が水に浸かるときに生じる変化であるという予備的な結果を得た。この刺激はアユモドキに限らず、フナ類や他のドジョウ類にも共通することも示された。魚類に普遍的な生殖行動誘起環境に発展する非常に興味深い発見である。 一方、孵化は、25時間という極めて短時間に、発眼前の未発達な状態で行われることを明らかにした。また、仔魚の水面付近の植物等への付着行動を見出した。さらに、仔魚は陸上植物が茂った泥底で流れのない一時的水域で成長し、稚魚は逆に流れがある砂礫底の環境に移動し河川本流へ降河することもわかった。この孵化から降河までの行動は、溶存酸素濃度操作の予備実験の結果と併せ、一時的水域の低酸素環境に対する適応と思われる。 以上の調査、実験の血液ホルモン濃度の測定は、ほぼ終了している。生殖関連ホルモンの動態からは、遡上時の成魚は卵成熟を排卵の前段階で止めており、環境が整うと短時間で最終成熟を迎え産卵に至ること等が示唆された。また、大西洋サケ回遊時の場合も解析し、回遊の普遍的な制御機構の提唱をめざしている。
|