2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19570070
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岡田 二郎 Nagasaki University, 環境科学部, 准教授 (10284481)
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Keywords | 神経科学 / 昆虫 / 触覚 / 空間行動 / 空間認知 |
Research Abstract |
本課題の目的は、夜行性昆虫の空間行動の神経機構について、コオロギをモデルとして解明することにある。最終年度に当たる本年度は、開発途中の実験システムの完全実用化と、同システムを用いた昆虫の空間行動のニューロン機構の解析を目的として実施された。 【実験システムの確立】昨年度のシステムは、動物の現在位置座標を取得するのみであったが、本年度は新たに動物の体軸方向を計測する機能が追加された。さらに自由歩行条件下で問題となる電極ワイヤのねじれを補償するユニット(アクティブ・スリップリング)が追加搭載された。以上によりサンプリング頻度30Hzで動物の位置座標と体軸方向をモニタしつつ、生体信号lChを最大10時間記録できる行動-神経活動計測システムが完成した。当初計画したアンテナ運動の計測機能については、その演算処理負荷が大きいため断念したが、その他についてはほぼ予定通りの性能が達成できた。 【行動実験】脳への電極埋込み手術の影響を調べる対照実験として、当初は行動のみについて解析予定であったが、システム開発に予想外の時間が費やされたため断念した。 【空間行動と脳ニューロン活動の関係】完成した行動-神経活動計測システムを用いて、前大脳領域(中心複合体およびキノコ体周辺)からニューロン活動を記録し、閉鎖空間における行動との関連を解析した。いわゆる場所細胞のような空間認知に関わるニューロンの発見には至らなかったが、(1)歩行開始時に興奮するニューロン、(2)歩行中に興奮するニューロン、(3)歩行終了時に興奮するニューロン、(4)歩行開始時に抑制されるニューロンなどの存在を明らかにした。またこれらのニューロンの多くが様々な体部位表面への機械刺激に対して興奮応答を示した。以上の結果は、中心複合体およびキノコ体が感覚入力を受けつつ、体移動の発現と調節に関わるという従来の仮説を支持するものである。
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Research Products
(5 results)