2007 Fiscal Year Annual Research Report
クロショウジョウバエ区の適応放散と多様性維持機構に関する包括的研究
Project/Area Number |
19570077
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡部 英昭 Hokkaido University of Education, 教育学部, 教授 (10167190)
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Keywords | ショウジョウバエ / the virilis section / 多様性 / 進化 / 生態 / 適応 / 東アジア / 渓流性 |
Research Abstract |
クロショウジョウバエ区のなかで特異的に年1化性と予想されていたオオクロ種群のDrosophila okadaiとDrosophila neokadaiの季節消長を調べた.前者の成虫は早春から出現し,5月中旬から6月上旬に繁殖期を迎える.第1世代成虫は7月下旬から出現するが卵巣を発達させることはなく生殖休眠に入る.Drosophila neokadaiの成虫はDrosophila okadaiよりもやや遅れて5月中旬頃から出現し,5月下旬から6月中旬にかけて繁殖を行う.第1代成虫は7月下旬頃から出現し,多くの成虫は性成熟を進行させ,8月上旬に2回目の繁殖を迎える.両種とも生木の形成層に産卵する.幼虫と蛹には気管が発達しており,水に浸った樹木での繁殖に適応的と思われる.越冬場所は渓流沿いの窪地(cliff-shelters)である.越冬中の成虫雌の卵巣には卵黄蓄積がみられない.精巣は淡いオレンジで,求愛行動はみられない.腹部には脂肪組織が発達していた.光周期に関する実験から,両種とも比較的低い温度・短日条件(18℃,LD10:14)で休眠が誘起された.このことから,両種とも条件休眠であり,Drosophila okadaiの1化性は冷温帯の限られた活動期間によるものであることが分かった. 暖温帯を北限とする亜熱帯種のDrosophila darumaの光周期反応を調べた.23℃短日条件(LD10:14)で卵巣発達が僅かに抑制されるものの,明確な生殖休眠は誘起されなかった.また,短日条件で維持した個体にも脂肪組織の蓄積は観察されなかった.最後に,分布が急激に拡大しているヨツゲ種群Drosophila quadrisetata自然集団の年齢構成を南日高ニカンベツ渓谷で調査した.9月上旬の集団は未発達卵巣を持つ雌が優占であった.この点は他の冷温帯種と良く似た季節消長であるが,正確な世代数,繁殖場所,越冬場所は特定できなかった.水辺依存度が強い種であるので,ショウジョウバエ科昆虫のなかでも特異的な生活史を示唆する.
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Research Products
(2 results)