2008 Fiscal Year Annual Research Report
クロショウジョウバエ区の適応放散と多様性維持機構に関する包括的研究
Project/Area Number |
19570077
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡部 英昭 Hokkaido University of Education, 教育学研究科, 教授 (10167190)
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Keywords | ショウジョウバエ / the virilis section / 多様性 / 進化 / 生態 / 適応 / 東アジア / 渓流性 |
Research Abstract |
クロショウジョウバエ区(the Drosophila virilis section)のなかでヨツゲショウジョウバエ種群(the quadrisetata species group)は渓流性で, 最大の分類群であるが, これまで野外生態がまったく不明であった。平成20年度に南日高山系で通年調査を行いDrosophila quadrisetataの季節消長を明らかにすることができた。本種は5月上旬頃から出現し, 6月中旬にかけて繁殖を行う。第1世代の成虫は7月中旬頃に出現し, 生殖器官を発達させ, 第2回目の繁殖に入る。第2世代成虫は8月下旬から羽化し始めるが, 新生雌は卵巣を発達させることなく, 休眠状態に入る。越冬前の個体は脂肪組織が非常に発達している。これら秋集団の個体は9月下旬頃まで渓流沿いのクリフシェルターに留まっているが, 10月下旬には越冬場所に向かう。これらの野外調査から, Drosophila quadrisetataは多化性の生活史を繰り返し, 成虫で越冬することが分った。興味深いことに, 本種の生活史はオオクロショウジョウバエ種群のokadai subgroupの種(特にDrosophila okadai)と非常に似ている。 森林性のカラスショウジョウバエ種群(the melanica species group)のDrosophila tsiganaはユーラシア大陸に広域分布し, 地方集団間で地理的変異が報告されている。今年度の研究で暖温帯集団(東京産, 京都産)と冷温帯集団(北海道産)間で著しい外部形態上の変異が観察された。暖温帯集団は北海道産よりも地理的に離れた南中国の集団(貴州省産), または欧州の集団(ピレネー山脈産)に近いことが分かった。日本国内で暖温帯集団と冷温帯集団の分布の境目は不明であり, 両集団間の遺伝的分化の程度や生殖的隔離機構の存在もまた不明である。
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