2007 Fiscal Year Annual Research Report
伊豆諸島に固有な植物の形態的,生態的,遺伝的分化に関する研究
Project/Area Number |
19570080
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧 雅之 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (60263985)
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Keywords | 伊豆諸島 / 固有種 / 種分化 / 遺伝的分化 / 訪花昆虫相 / 形態的分化 / ハチジョウイボタ / シチトウスミレ |
Research Abstract |
伊豆諸島には,小笠原列島ほどではないが固有な植物分類群が見られ,これらの多くは海洋島で見られる種分化と大陸で見られる種分化の中間的段階にあるものといえる.本研究では伊豆諸島固有の植物分類群を,形態的,生態的,遺伝的に解析することにより,種分化の初期的段階でどのようなことが起きているかを明らかにしようとしている. 平成19年度は,伊豆固有分類群のうち,主に他家交配を行っていると思われるハチジョウイボタと閉鎖花と開放化の両方の生産を行っているシチトウスミレを対象に研究を進めた. ハチジョウイボタは,本州のオオバイボタに近縁な変種であり,花筒が短いとされてきた.形態的計測の結果,ハチジョウイボタは伊豆諸島を南下するにつれ花筒が短くなる傾向が見られた.ハチジョウイボタの訪花昆虫相は,伊豆諸島を南下するにつれて貧弱になることから,訪花昆虫相がハチジョウイボタの花筒長の淘汰圧になっていると推定された.一方,SSRマーカーを用いた解析では,ハチジョウイボタの遺伝的多様性は,本土からの距離と相関がなく,強いボトルネックを受けていないか,あるいは,島間での遺伝子流動が存在することが示唆された. シチトウスミレは,タチツボスミレと近縁であり,当初の予測では,ベーカーの法則に従って,本土から離れるにつれて,自家交配の頻度が高くなる(つまり,閉鎖花の頻度が高くなる)傾向があると予測されたが,本州から八丈島までのいずれの集団においても自殖率が高い傾向があり,有意なパターンは見られなかった. 伊豆諸島固有種のうち,おそらく他家交配を主に行っている分類群の方が,訪花昆虫相による淘汰により,大きな分化を示している可能性がある.
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