2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19570084
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
木村 清志 Mie University, 大学院・生物資源学研究科, 教授 (00115700)
|
Keywords | 魚類 / 分類学 / インド洋-太平洋 / アジ科 / ムロアジ属 / アカアジ / マルアジ |
Research Abstract |
当初の計画どおり,本年度は材料の採集とその形態観察に重点をおいて研究を進めた。材料の採集は,三重県志摩市および尾鷲市,台湾(別予算による出張),タイ国プーケットで行い,生時の体色をデジタル画像として保存するとともに,分子生物学用のアルコール組織標本を摘出した上で,魚体をホルマリンで固定した。博物館所蔵標本については,国立科学博物館,北海道大学,鹿児島大学,京都大学,琉球大学,横須賀市立博物館,神奈川県立博物館の各所蔵標本について観察した。本年度はムロアジ属魚類の中でも,側線直走部の全域が稜鱗で被われる種についての分類学的検討を加えた。その結果,各鰭が赤い種はSmith-Vanitz(1999)によると,Decapterus kurroidesの1種と考えられていた。しかし,本研究の結果,インド洋-太平洋の熱帯域には明らかに体型的に異なる2種が存在することが明らかになった。このうちのひとつは,東アジアの温帯域に生息するアカアジ(Smith-Vanitz,1999によってD.kurroidesのシノニムとされてきた)とよく類似していることも明らかになった。今後は分子情報も用いて,これらの分類,種分化について検討を進める。一方,各鰭が赤くない種はインド洋-太平洋の熱帯域に広く分布するDecapterus russelliと東アジアに分布するマルアジが存在すると考えられてきた。しかし,本年度の研究では,両種は形態的にほとんど差がなく,これらは同種である可能性が極めて高くなった。このように,.本年度行った形態学的研究から,従来の分類体系がかなり崩れる可能性が明らかになり,今後の分子生物学的検討の重要性がますます高まった。
|