2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19570090
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 文男 Tokyo Metropolitan University, 理工学研究科, 助教 (40212154)
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Keywords | 種分化 / 種間交雑 / 形質置換 / 配偶行動 / 種内多型 / 浸透的交雑 / ミトコンドリアDNA / トンボ |
Research Abstract |
近縁の2種が同所的に生息するようになると,急速に形質置換を引き起こすことがある.しかし,元来近縁な2種であるため,種間交雑が生じる可能性も高い.形質置換は2種の形態差を大きくするが,種間交雑は2種の形態差を小さくする.カワトンボとオオカワトンボの分布をみると,異所的集団と同所的集団が認められる.このうち,29ヶ所の同所的集団に対して2種間の形態差を調べた結果,形態の種間差が大きい場合と小さい場合が認められた,さらにこれら29集団の核(ITS領域)とミトコンドリア(COI領域)のDNA解析を行った結果,交雑が起こらず形質置換が生じている集団と,交雑が生じて形質置換が起こっていない集団があった.もし交雑が起こらなければ,2種間で急速に形質置換が生じるのではないかと考えられた.こうした集団を地理的に並べて見ると,九州などの西日本では2種間の遺伝的差異が大きく,もっとも複雑な翅色多型の組み合わせが認められるのに対し,関東や中部地方の東日本では2種間の遺伝的差異が不明瞭で種間の翅色多型に種間差がなくなっていた.この両者の中間域では,翅色の組み合わせに種間差が生じ,遺伝的差異の大きい集団から小さい集団が連続的に見いだされた.このように,翅色は同所的集団において,2種の間での交雑を抑制する配偶行動上での有効な信号となっている可能性が高い.
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Research Products
(1 results)