2009 Fiscal Year Annual Research Report
空間系統学的アプローチによるPodisma属昆虫における染色体分化プロセスの解明
Project/Area Number |
19570099
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
立田 晴記 University of the Ryukyus, 農学部, 准教授 (50370268)
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Keywords | 種分化 / 交雑帯 / 染色体 / 転座 / マイクロサテライト / 系統地理 / 空間統計 / 生殖隔離 |
Research Abstract |
サッポロフキバッタPodisma sapporensisの染色体レースの交雑帯が野外で生じているか否かの調査を北海道で引き続き実施した.これまでの情報に基づけば,上川郡上川町と河東郡上士幌町を結ぶ三国峠付近でX0/XXレースがロバートソン転座型のXY/XXレースに置き換わると考えられてきたが,転座型のXY/XXレースは三国峠より北方の上川町南東部まで広がっていることが明らかになった.また国道273号沿いを調査し,南方の糠平付近までXY/XXレースが分布していることが明らかになった.糠平の南西に位置する幌加峠ではX0/XXレースが分布していることがわかっており,2つのレースが接触する地域は幌加峠と糠平を結ぶ約3kmの地域内に存在する可能性が高くなった.現在採集した個体については,遺伝子解析を行っている.またクサツフキバッタP.kanoiについては,これまで研究例が無かった鳥甲山頂付近で採集した標本について,6つのマイクロサテライト遺伝子多型を調査した.その結果鳥甲山に近接する地域で見つかっている遺伝子型とは異なるタイプを持つ個体が生息していることが新たに判明し,集団間の地理的距離が離れるにつれ,遺伝構造が徐々に異なると言った「距離による隔離」モデルでは本種の遺伝変異を説明出来ないことがわかった.これは最終氷期以降に遺存集団の分布の押し上げが生じた際,距離による隔離の効果のみで現存集団が成立した訳では無く,押し上げが生じる以前に固有の遺伝構造を持つ集団が隣接する地域があった可能性を示唆している.
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