2008 Fiscal Year Annual Research Report
硫酸転移酵素による多様な生体異物認識の立体構造基盤解明
Project/Area Number |
19570106
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角田 佳充 Kyushu University, 農学研究院, 准教授 (00314360)
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Keywords | 硫酸転移酵素 / 薬物代謝 / X線結晶構造解析 / 生体異物認識 |
Research Abstract |
薬物代謝酵素の一つである硫酸転移酵素(SULT)は、様々な外来性異物に硫酸基を転移することで、その代謝、機能調節を行っている酵素である。SULTの特長として、多くの種類の外来性異物を基質としてとり、広い基質特異性を持っていることが上げられる。この特徴は、外来生性異物を代謝する酵素が一般的に持っている性質であり、薬物代謝のメカニズム解明の観点からも重要な研究課題である。本研究は、マウス由来硫酸転移酵素SULT1D1について、X線結晶構造解析による立体構造解析と生化学的な解析を行うことで、その広い基質特異性と硫酸転移反応機構についての解析を行った。 大腸菌で大量発現、精製したSULT1D1を、硫酸供与体PAPSの反応後生成物であるPAP存在下で単結晶を作成した。これらの結晶を用いて、SPring-8およびPFでX線回折実験を行ったところ、最高分解能1.15Aの高分解能の回折データの収集に成功した。分子置換法による位相決定および構造精密化を行い、SULT1D1のPAPとの二者複合体の精密な立体構造を決定することができた。次にこの高分解能の結晶を用いて、ソーキング法により、ρ-ニトロフェノール(pNP)、α-ナフトール(αNT)との基質結合体結晶を作製し、SULT1D1-PAP-pNP三成分複合体、SULT1D1-PAP-αNT三成分複合体の構造決定をどちらも分解能1.3Aで決定することができた。これらの決定した3種類の構造から、pNPとαNTは触媒中心以外でも基質結合ポケット内に結合でき、芳香環を認識する部位が2か所あることと、基質の形状に対応してGlu247の配向が変わることによって、基質結合ポケットの形状が大きく変化することがわかった。これらの結果は、SULTの持つ広い基質特異性の構造基盤の一端を明らかにしたものと考えられる。
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