2007 Fiscal Year Annual Research Report
立体構造に基づく臨床検査用酵素の機能改変と機能発現機構の解明
Project/Area Number |
19570108
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
伊藤 潔 Nagasaki University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (50201926)
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Keywords | 結晶構造解析 / 臨床検査 / ケトン体 / SDRファミリー / MDRファミリー / 基質特異性 / コンフォメーション変化 |
Research Abstract |
糖尿病性ケトアシドーシスを防ぐため、I型糖尿病患者の治療に際してはケトン体をモニターすることが推奨されている。D-3-ヒドロキシ酪酸脱水素酵素(HBDH)は、D-3-ヒドロキシ酪酸(D-3-HB)に特異的に作用する酵素で、ケトン体の酵素的定量用の試薬として有用である。臨床検査試薬としての酵素の基質特異性は極めて重要で、本研究では、主にHBDH関連酵素を材料として、酵素の分子認識機構を解明することを目的とした。当初の計画通り、申請者らの明らかにしたHBDHの結晶構造から推定した、基質認識に関わるアミノ酸残基について多数の部位特異的変異体を作製して、3位メチル基、カルボキシル基の認識に関わる残基を同定することができた。HBDHはSDRファミリーに属する酵素であり、基質結合に伴ってヘリックスを含む大きな領域が基質を覆うように動くことが知られている。その際、蝶番のように働くと予想されたThr190の変異体の解析から、Thr190の重要性も確認することができた。さらに、基質とはならないが、競合阻害剤となるL-3-HBと野生型HBDHとの複合体結晶を得ることに成功し、その構造を決定した結果、これまで不明であったヘリックス領域と基質との相互作用を明らかにすることができ、論文を投稿準備中である。一方、基質類似物であるL-スレオニンに作用するスレオニン脱水素酵素(TDH)の基質特異性についても検討を行い、以前の報告とは異なり、HBDH同様に厳密な基質特異性を有しており、MDRファミリーに属するTDHの基質認識機構も類似したものであることが示唆された。基質あるいは阻害剤の結合した、いわゆるクローズド型SDRの複合体構造の解析は少なく、同ファミリー酵素の基質認識機構と反応機構を理解する上で大変重要な成果である。
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