2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト・メチレン葉酸還元酵素のリン酸化と性質に関する研究
Project/Area Number |
19570123
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山田 和弘 Tokyo University of Agriculture and Technology, 大学院・共生科学技術研究院, 特任准教授 (90431973)
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Keywords | 酵素化学 / 栄養化学 |
Research Abstract |
メチレン葉酸還元酵素(MTHFR)はメチオニン・葉酸代謝の接点に位置する重要な酵素で、リン酸化によって代謝調節に重要なアロステリック調節機能を得ることが示唆されている。しかし、MTHFRをリン酸化する酵素(群)については不明である。20年度の本研究では、19年度に構築したMTHFRと相互作用するタンパク質の同定方法をもちいて、未知タンパク質の検索を行った。また、MTHFRのリン酸化に及ぼすその他の因子についての検索も行った。さらに、立体構造が不明なMTHFRの結晶化について検討を行った。 1.ホルムアルデヒドを架橋剤として用い、細胞内(in vivo)でMTHFRと相互作用するタンパク質をラベル化する方法によりMTHFRと相互作用する因子を、再現性よくラベル化した。MTHFR・相互作用因子複合体を細胞内から精製し、未知因子の同定を行ったが、リン酸化酵素は発見されなかった。しかし、MTHFR・相互作用因子複合体を形成させる過程の条件検討において、MTHFRの新たな性質を明らかにした。例えば、リン酸化される野生型MTHFRとリン酸化されないThr34Ala変異体ではアロステリック因子であるアデノシルメチオニンの結合に応答するタンパク質の構造変化が異なり、この構造変化の違いがリン酸化酵素との分子認識に利用されるものと推察された。この成果は他の成果と併せて国際学会にて発表した。 2.ヒトMTHFRのN末端を36残基欠損した変異体タンパク質を作成・精製し、タンパク質結晶作成の条件検討を行った。様々な条件下で結晶化を試みたところ、PEG4000を用いた緩衝溶液中でMTHFRの黄色い結晶が観察された。さらに実験を行ったが、再現性が十分ではなく更なる条件検討が必要と思われた。しかし、この研究により得られた高等動物MTHFRの結晶は世界初であり、今後の構造生物学的な研究の発展に大きく希望がもてる成果であると考えている。
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