2007 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞増殖因子が有する癌細胞増殖抑制作用のシグナル伝達の分子機構
Project/Area Number |
19570124
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 利明 Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (40263446)
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Keywords | 肝細胞増殖因子 / 癌 / 細胞周期 / 癌抑制因子 / シグナル伝達 / Id1 / Ets / HepG2 |
Research Abstract |
肝細胞増殖因子(HGF)は、正常肝細胞及び一部の癌細胞株の増殖を促進する一方、他多数の癌細胞株に対しては増殖を抑制する。HGFの受容体c-Metは共通である為、これら相反する作用は細胞内シグナルの違いに由来すると考えられる。HGFによる細胞増殖制御の分子機構解明は、癌の増殖を抑制する手法の開発に直接つながる重要な課題である。 本研究は、肝癌細胞株HepG2をモデルとして用い、HGFによる癌細胞増殖抑制の分子機構解明を目的としている。平成19年度は、鍵となる癌抑制因子p16の発現上昇に着目し、p16の発現制御に直接係わる転写因子Etsの活性調節機構の解析に取り組んだ。その結果、以下のことを新たに見出した。1.Ets活性を抑制する制御因子Id1の発現量が、HGF刺激によりmRNA及び蛋白質レベルで急激に減少すること、2.Id1蛋白質は常にubiquitin-proteasome系による分解を受けているが、その分解速度はHGF刺激で変化しないこと、3.HGF刺激によるld1の減少は、細胞内シグナル因子であるERKに依存的、及びERKに非依存的な経路により制御を受けるが、一方で、PI3K経路による制御は受けないこと、4.Id1の過剰発現は、HGFによるp16の発現上昇を抑制すること、5.Id1の過剰発現は、Etsにより制御されるp16遺伝子プロモーターの活性を抑制すること、6.Id1ノックダウンによる発現抑制は、ERK活性と協調的にp16遺伝子プロモーターを活性化させること。これらの結果により、HGF刺激によるId1の減少が、HGFによるHepG2細胞の増殖抑制において重要な役割を持つことを明らかにした。HGF刺激によりp16の発現量が変化することから、今後、HGF刺激が癌細胞に与える分子変化を老化との関連からさらに明らかにする計画である。
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