2008 Fiscal Year Annual Research Report
アダプター分子Grb10によるWntシグナル伝達経路抑制の分子機構の解明
Project/Area Number |
19570127
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柳川 伸一 Kyoto University, ウイルス研究所, 助教 (70183978)
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Keywords | Wnt / シグナル伝達 / アダプター分子 / Grb10 |
Research Abstract |
Canonical Wnt経路では、Low density lipoprotein receptor related protein 6 (LRP6)と7回膜貫通タンパクFrizzledの複合体が、機能的なWnt受容体である。LRP6をBaitとしたYeast two hybrid screenによって、新規LRP6結合蛋白としてGrowth factor receptor bound protein 10(Grb10)蛋白を同定した。Grb10蛋白は、受容体型チロシンキナーゼに結合するアダプター分子として見出され、Pleckstrin homologyやSH2など特徴的な機能ドメインを持つ細胞質内の蛋白である。 TCF依存性のリポーターアッセイによれば、Grb10の強制発現はWnt経路を強く抑制し、その作用点は、β-cateninの上流であり、Grb10を強制発現した細胞では、正常細胞に比べ、Wnt3a刺激によるβ-cateninの誘導は著しく押さえられた。さらにRNAiによってGrb10の発現を抑制すると、TCF依存性の転写活性は高進した。従ってGrb10は正常細胞に於いて、Wnt経路の負の制御因子として働いていた。Grb10の欠損変異体を用いた解析によれば、C末端のSH2、およびN末端の両方が、Wnt経路の抑制に必要であった。 一方、Wnt刺激によって、LRP6の細胞質ドメインにAxinがリクルートされると、Axinはβ-catenin分解複合体のScaffoldとしての機能を失い、β-cateninの蓄積が生じる。Wntに誘導されたAxinとLRP6との結合は、Grb10によって阻害される事が、免疫共沈殿法に明らかになった。LRP6の細胞質ドメインを巡ってGrb10とAxinが競合しており、これがGrb10によるWnt経路の抑制の分子機構であろうと推測した。
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Research Products
(1 results)