2007 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.elegansの「忌避行動増強」に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
19570171
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
木村 幸太郎 National Institute of Genetics, 構造遺伝学研究センター, 助教 (20370116)
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Keywords | 線虫 / 分子生物学 / 行動 / 神経科学 / 可塑 / ドーパミン |
Research Abstract |
神経機能が経験により変化する事、すなわち神経機能の可塑性は高次神経機能の基盤である。私は神経機能可塑性の新たな基本原理を明らかにするために、モデル動物・線虫C.elegansの誘引行動/忌避行動という、最もシンプルな感覚応答行動の可塑性に関する研究を行っている。特に本研究では、「忌避行動の増強」に関する分子生物学的解析を課題としている。私は、C.elegansに嫌いな匂いを経験させると、その匂いに対する忌避行動が増強されるという興味深い現象を新たに見いだした。さらにこれまでの遺伝学的解析から、この現象はドーパミン生合成に関わる遺伝子によって制御される事を示唆する結果を得た。本研究の目標は、これら遺伝子が忌避行動増強に実際に関与する事を分子生物学的手法を用いて確認し、さらにそれぞれの遺伝子が機能するニューロンを同定することである。 H19年度以前には、C.elegansにおけるドーパミン生合成に特異的に必須であるチロシン水酸化酵素cat-2遺伝子のノンセンス点突然変異体において、匂い忌避行動の増強が有意に低下する事を見出していた。H19年度においては、(1)cat-2遺伝子の欠失変異体も同様の表現型を示す事、また(2)これら変異体の表現型は、野生型遺伝子の導入によって回復する事を明らかにした。さらに、(3)ドーパミン受容体の遮断薬(antagonist)が忌避行動増強を抑える事を見出した。以上の結果から、C.elegansの匂い忌避行動の増強はドーパミンシグナル伝達によって制御されている事が強く示唆された。H20年度は、この現象に関与するドーパミン受容体とその機能部位の同定を目指す。
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Research Products
(4 results)