2008 Fiscal Year Annual Research Report
線虫C.elegansの「忌避行動増強」に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
19570171
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 幸太郎 Osaka University, 理学研究科, 特任准教授 (20370116)
|
Keywords | 線虫 / 記憶と学習 / 神経機能の可塑性 / ドーパミン |
Research Abstract |
神経機能が経験により変化する事、すなわち神経機能の可塑性は高次神経機能の基盤である。私は神経機能可塑性の新たな基本原理を明らかにするために、モデル動物・線虫C. elegansの誘引行動/忌避行動という、最もシンプルな感覚応答行動の可塑性に関する研究を行っている。 特に本研究課題では、「忌避行動の増強」に関する分子生物学的解析を行った。私は、C. elegansに嫌いな匂いを経験させると、その匂いに対する忌避行動が増強されるという興味深い現象を新たに見いだした。H19年度における遺伝学的及び薬理学的解析から、C. elegansの匂い忌避行動の増強がドーパミンシグナル伝達によって制御されている事が確認された。ドーパミンは哺乳類において、認識・感情・報酬・薬物中毒といったさまざまな高次神経機能に関与しているが、in vivoでの受容体下流のシグナル伝達機構は不明な点が多い。H20年度は、C. elegansの匂い忌避行動増強に関わるドーパミンシグナル伝達機構を明らかにするために、遺伝学的解析によるドーパミン受容体の同定を行った。哺乳類には5つのドーパミン受容体が存在しており、ドーパミンの結合により細胞内アデニル酸シクラーゼを活性化するD1型とこの働きを抑えるD2型に分けられている。C. elegansのゲノム中には1つのD1型(dop-1)と2つのD2型(dop-2, dop-3)が存在する事が知られていた。これらの遺伝子に対して遺伝学的解析を行った結果、dop-3遺伝子がC. elegansの匂い忌避行動増強に関与する事が明らかになった。
|